声と性癖
11.全てをあなたに
そして、ここは蓮根のオフィスだ。
夕食を持って訪ねてきた結衣をオフィスの中に招き入れ、さっさと自分の膝の上に乗せてしまった蓮根である。

「蓮根先生…?」
「んー、結衣さん?名前でしょう?」
「あの…ご飯がいただけません。」

先程から、蓮根は結衣を自分の膝に乗せ、頬に、耳元に、唇の横に、ちゅ、ちゅ、とキスをしていて、結衣にしてみれば食事どころではない。

部屋の中は、先程蓮根がなぜか部屋の電気を落としてしまい、デスクライトのみが付いている状態だ。
ほんのり明るいだけのその照明は、なんだか、雰囲気が良すぎる。

応接セットに座っている二人には、明るすぎず、暗過ぎず、辛うじて表情は見える明るさだ。

「先にあなたを食べたい。」
「もうっ…。」
とは言ってみたものの、自分でも顔が赤い自覚があるので、結衣も説得力がないことは、十分承知している。

「なんで、そんなにいつも甘いんです?」
「ことさらに甘くしている自覚はありませんよ。…そうですね、強いて言えば、あなたがそうさせている、としか…。」

うわー、大丈夫か?この人?
ってほかの人なら確実に思うのだけれど、蓮根の口から確信をもって言われると、強烈な甘さになって結衣に届くだけで、それは、強烈に恥ずかしい!
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