声と性癖
いい声、とか一瞬でも思った自分を呪い殺したい。
この人声も、顔もいいけど、危ない!

「蓮根先生、聞いてもいいですか?」
「結衣さん、どうぞ涼真、と。」

「いえ、大丈夫です。」
「言ってくださったら、何でもお答えします。」
「では、結構です。」
店を出よう。

がしっと腕を掴まれる。
早っ!

とっても愛しい人を見るような甘やかな表情。
「行かないでください。何でも答えますから。」
ふわりと腰に腕を巻かれて、手で顔を仰けられる。

破壊的に整った綺麗な顔。
蓮根の繊細な指が、自分の顔に触れている、かと思うとそれだけでも動悸が激しくなりそうだ。

この表情、反則ではないのだろうか。
それに腰にくるっ!声!!

「何がお気に召したんでしょうか?」
結衣はやっとの思いで声を出す。

「声です。」
迷いなく、蓮根はそう言った。
なんか、そんな気はしたけども。
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