声と性癖
それは、結衣なりのお断り、だったのだが。
「奥ゆかしい人ですね、あなたは。」
ガン無視である。

しかも、
ほんっとに、囁くの、やめてもらっていいですか!!

「大丈夫ですから。」
「僕のことは気にしなくていいんですよ。そうだ、せっかくだから、お昼をご一緒しましょう。銀座ならいいお店があります。」

聞いてないのかな。
結衣はすうっと息を吐く。

「蓮根先生…。本当に、お気遣い嬉しいんですけど、そんな事をして頂いたら、会社に怒られてしまいます。お気持ちだけで、充分です。」
少し、俯き加減におしとやかに言ってみる。

NOと言わずに、断る!
しかも、お仕事モード全開だ。

分かるよね!大人なんだし。
察するよね!普通。
気持ちだけで充分て、断り文句だよね!

「結衣さん…、そんな僕とあなたの間にそんな水くさい。気持ちだけでは、伝えたいことも伝わりません。僕は伝えたいことは形にする主義です。」
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