【完】傷だらけのプロポーズ

「だから、私にとってチャンスだと思ったんです。 はっきりと宣言をしちゃうと、小田切さんが副社長と付き合っててくれて安心してます。
私にも付け入る隙が出来たかなあって。そんな事を考えてしまう浅ましい女です。
だからもしも朝比奈さんが…寂しくなった時はいつだって私を呼んでください」

彼女の言葉に胸の奥がキュッとなった。
人は思っているよりずっと、他人の事をよく見ているのかもしれない。

盲目だったのはどちらだったか。
手を振りながらマンションの中に消えていく彼女の後姿を見て、思う。


今まで付き合ってきた女性たち。知らず知らずに美麻と比べて来た。 美麻以上の女はこの世にいないと思っていた。 それこそ、盲目だったか。

自分の中でそう決めつけていただけで、自分の幸せは別の場所にあるのかもしれない。


美麻じゃない他の女と真剣に向き合ったら、見えなかった良い所が分かるのかもしれない。 そして俺も誰かと幸せになれるのだとしたら、美麻と結城大河の幸せを心から願える男になれるのかもしれない。

美麻の幸せを一番に願える、自分の一番なりたかった男に。

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