妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~



そこは、広いし書架も私の背丈の倍ほどで、専門書が多く私が読むにはちょっと堅いものが多かった。




書架の間を抜けると開けた場所があり、二人がけのソファと机のセット。長テーブルが真ん中にある。




「ソファの方がいいですかね。ゆっくりできるでしょうし」




そう言って常木さんはゆるりと腰掛け、隣をぽんぽんと叩いた。




「いつまでそこで立ってるんですか。ほら……ここ」



その仕草がやたらと艶かしく妖艶であったため、しばし動揺する。



「……でも、ほんとに入ってよかったのかな」


私がもたもたしていると、常木さんはポケットから鍵を取り出して私に見せた。


「それは、鍵?」


「そう、ここの鍵です。
僕がここでひっそり勉強がしたいって申し出たら、教授から鍵を譲ってもらえたんです。ちなみにここの鍵はこれ一本です」



それから常木さんは入口を指さす。



「鍵も内側からかけましたし、ここに入って来れる人はいません」


「なんと、用意周到な」


< 147 / 242 >

この作品をシェア

pagetop