妖守の常木さん~妖守は彼女を独占したい~



私がいつものように軽くあしらいながら、教室の雰囲気を確かめる。





出る前とみんなの表情が違う、「賑やかだな」と思った。



なんでだろうと考えるまでもなく、クラスメイトが顔をくもらせる原因である鈴木さんが今は教室にいないからだとわかった。






原因があるといえば彼女が悪いように聞こえるが、実際彼女は被害者である。




ああ、やはりこの教室の空気は最悪だ。





換気がどうこうとかではない。




負の感情がぐるぐると渦巻いていて、どろっとっした肌触りのそれが私たちを覆うようにそこらじゅうに充満している。






このクラスにはいじめが横行し、気の強い河野さんを筆頭に鈴木さんを目の敵にしていた。





鈴木さんはもともと河野さんと仲が良かったはずだが何故か仲間割れをしたらしく、今ではすっかり孤立している。






私には関係ないところでのいざこざだったので、注意したり、はたまたそれに乗っかったりすることはなかったけれど………



なんとなく、見て見ぬふりは出来ずにいた。







必ずしも、拳を握り、体を張って助けに入ることで良しとなるとは限らない。間に割って入ることで余計に関係がもつれることもある。




さて一体どうすればいいのか、というのが悩みなのである。




早々に吐露してしまえば私は「そこまでにしておきなさい!」となる勇気を発揮するには僅かにも期待しがたい。



発揮するにしても、相当な時間を要し、足踏みをしてる間に卒業してしまうことだろう。



己の立場と鈴木さんを天秤にかけ、右往左往していたがその間にも事態は一向に好機の兆しがなく、



うずうずまごつきながら好転してくれればいいな、と待つばかりなのである。





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