好きな人には好きになってもらいたいじゃん。




顔を上げれば、怒ったように町田くんを睨む廉がいた。

声もいつも以上に低くて、ビクッとする。


廉が置いている手に力が込められた。




「悪い悪い。そんな怒んなって」



町田くんは苦笑いをしながら、両手を上げて降参、とポーズで示す。

廉はそんな町田くんを睨み続ける。




「そ、そうそう。今日さ、花火大会あるじゃん?一緒に行こうって誘いに来たんだよ」

「あたしは行けるよ。くるたんも行こうよ」

「そうだね、行こうかな」



今日の花火大会は行く予定なかったから、予定はあいている。

いっくんは部活のメンバーで行くって言っていたから。


もしかしたら会えるかもしれないし、気合い入れていこう。




「やった、両手に花。再び!」

「……俺も行く」

「さっき断ったのに?」

「行く」

「かわいいな、お前」



町田くんが廉を見てニヤニヤする。

廉は嫌そうに舌打ちをした。



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