好きな人には好きになってもらいたいじゃん。



……いつから、気づいていたんだろう。

足が痛いこと。


もしかしたら、休憩したときも、わたしのためだったのかも。


……なんて。



廉におんぶされて気持ちが落ち着く。

廉の背中、こんなにおっきかったっけ?



「……いっくん、浴衣だったよ」

「……それがどうした」

「……廉は、なんで着ないの?」

「…………こうなるからだよ」



こんなに近くにいるのに、花火のせいか、廉がなんて言ったのかわからなかった。

だけど、聞き返すこともしない。



「……廉がいてくれてよかったよ」


首元に顔を埋める。

わたしひとりだと、きっとどうにもできなかった。


泣くこともできず、呆然として、いっくん目の前に笑顔を作ることしかできなかったと思う。



廉の首に回した手にぎゅっと力を込める。





< 134 / 347 >

この作品をシェア

pagetop