男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている

 就寝時間はとっくに過ぎている。
 いつものピケだったら、天蓋付きのベッドの中ですやすやと眠っている時間だ。

 暗い廊下に、ろうそくの明かりが揺れる。
 城へ来てからは初めて使うランタンの明かりを頼りに、ピケは冷たい廊下を歩いていた。

 イネスから「ピケにはノージーとのスキンシップが必要ですわ!」と助言されたその日の夜。
 いつも通りに就寝したピケだったが、物音に目を覚ました。
 嫌な予感を抱きながら目を覚ますのは、いつ以来だろう。
 あわてて飛び起き、嫌な音を立てる胸を押さえながら周囲を警戒する彼女の目に入ったのは、扉からこちらをのぞく目──ではなく、窓の外でひっくり返っている鳥だった。

 おそらく物音は、この鳥が窓にぶつかった音だったのだろう。
 倒れている鳥は昼行性で、こんな時間に飛ぶなんて考えられないことだけど。

 動物がいつもと違う行動をとる時は、大抵良くないことの前触れである。
 魔の森でそれを嫌というほど学んでいたピケは、言いようのない恐怖を覚えた。
 この感覚は、大型の魔獣がピケを狙って忍び足で近づいている時に似ている。
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