男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
「ひっ⁈」

 最初に目に入ったのは、肌の色。ピケの体にひっつくように、身を丸めて寝ている人がいた。それも全裸で、だ。
 目を見開き、小さな悲鳴を上げたピケは、強張った顔で二度見する。

 黒と赤が混じった独特な色合いの長いねこっ毛。陶器のように白い顔に、シャープな顎。閉じたまぶたについているまつ毛は、影を落とすほど長い。目鼻立ちは驚くほど整っていて、寝ていたって美女だとわかる。

 細い首をしているが、意外にも肩幅はしっかりしているようだ。しなやかに伸びた腕、きゅっと引き締まった腰……と、そこまで確認したところで「ううん」と吐息をこぼしながら美女が寝返りを打った。
 吐息混じりの声が妙に艶っぽくて、ピケの目が自然と美女の唇へ向かう。

 やがて、美女のまぶたが震え、ゆっくりと開かれた。
 現れた深い緑色に、目を見張るほどの美女でも自分と似た部分があるのだと、ピケは感動を覚える。
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