男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている
 まさか、考えていることがバレたのだろうか。
 ピケはとっさに、隣にいたノージーの腕に縋りついた。

「大丈夫です」

 宥めるように、ノージーの手がピケの手をさする。
 あたたかな体温を感じてピケは少しだけ冷静さを取り戻し、小さく頷いた。

「こらこら、ヤーシャ。怖い顔をして睨むでない。お嬢さんが怯えているではないか」

「元からこの顔なのだが?」

「では、いつも以上ににこやかに笑うのだ。良いな?」

「善処します」

「それは直すつもりがないやつのセリフだな。仕方のないやつめ」

 うりうり、と国王らしき男が総司令官っぽい男を肘でつつく。
 二人の気楽なやりとりがひと段落したところで、キリルがイネスを伴って入室した。
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