男嫌いな侍女は女装獣人に溺愛されている

 アルチュール国とロスティ国では、環境も文化も習慣も、違うものが多い。
 イネスは第四王女にふさわしい教育を受けてきたが、それでもひょいと放り出されて順応するのには無理がある。
 そのため、春に行われる結婚式までの間、王城で王太子妃になるためのレッスンを受けることになっていた。

 侍女であるピケもイネスと一緒にレッスンを受けても良いという許可が出ていたのだが、もともと勉強することがあまり得意ではない彼女はもっぱら、ダンスや護身術といった体を動かすレッスンにしか興味がない。
 イネスが無理強いしないことを良いことに、座学は最低限しか顔を出さなく……というより、居眠りするので出禁になった。

 冬になったら、イネスの侍女として本格的に本来の仕事──化粧、髪結い、服装・装飾品・靴などの選択、衣装の管理について仕込まれるらしい。

 今のところレッスン以外の時間は大抵、イネスのお人形として彼女の気が済むまでドレスアップされたり、お茶に付き合ったりしているか、メイドたちに混じって掃除をしている。
 木登りが得意な彼女は高いところの掃除も率先してやるので、最近は高所の掃除を任されることが多かった。
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