私はずっと見ていた


その人をずっと


見ていた


朝も


昼も


夜も


その人が笑っている時も


泣いている時も


喜んでいる時も


悲しんでいる時も


ずっとずっと見ていた。


見ていただけで、何もできなかった。


この世界から出られない。


出ようとすると、何かに突き飛ばされる。


「大丈夫?」


とか


「良かったね」


って声をかけても聞こえていないようだった。


私はこんなにもあなたを見て、愛しているのに。


私の思いは届かない。


やがて、その人にパートナーができて


「大丈夫?」


とか


「良かったね」


という言葉をお互いにかけあったりしていた。


その場所は私の場所だったはずなのに。


あなたの場所じゃないのに。


あなたは当たり前という顔をしてその人の隣にいる。


しかし、心の中でくすぶっていた怒りの炎もその人が笑っているからいつの間にか落ち着いた。


そして、時が経ちその人の髪の毛に白いものが混ざってきた。


ある日、その人は突然私の前から消えた。


私はその人のパートナーだったあなたにゴミに出された。


ゴミに出すときにあなたは言った。




「こんな大きい鏡、一体どこで買ったのかね?」




そうだ。


私は鏡だった。
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