私、身代わり妻だったはずですが。


 千咲のことを考えながら、私はお風呂から出て和志さんがいるリビングへ向かう。しっかり、彼との“結婚指輪”をつけて。


「和志さん……? あれ?」


リビングに戻ると、彼の姿がない。トイレかな?


「千咲、ここだよー……明日休みだよね? ワイン飲まない?」

「え……? 休みだけど」


今日って何かお祝いごとあったかなぁ……? 


「大きい商談が通ったんだ、だからお祝い」

「え、そうなの!? おめでとう!」


 和志さんはお酒が大好きで特にワインが好きらしく……彼専用のワインホルダーがある。生前、千咲も『和志はワインが大好きで〜』って言っていたくらいだ。


「だから、今日はローストビーフ作ってみたよ。お肉奮発したよ〜」

「えっ! 和志さん、すごい……お店みたいだね」

「うん、頑張っちゃった。さ、食べよ食べよ〜」



< 5 / 25 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop