政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 悪魔の囁きの方が、もっと親切に聞こえるんじゃないだろうか。そんな錯覚をするほど、秋瀬くんは危うい感情を声に潜ませる。

 音に混ざる熱が、私を求めて燃えるようだった。めちゃくちゃにしてしまいたいという秋瀬くんの欲求を強く感じ、ついに抵抗が緩む。

「昨日、みたいに……してほしい……」

 秋瀬くんの熱にあてられてこぼれた声は、自分のものとは思えないほど弱弱しく、濡れて艶を含んでいた。私が秋瀬くんの声から欲を感じ取ったように、秋瀬くんもまた、私の声から心の奥底の願望を読んだに違いない。

 ふ、と笑い声がした。そんな声にさえ、身体がじわりと火照る。

「昨日より甘やかしてやるから」

 秋瀬くんが身体を起こし、ぎしりとベッドを軋ませて私に覆いかぶさる。

 落ちたキスは、私を陥落させるにふさわしい甘さをしていた。


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