政略結婚のはずが、極上旦那様に溺愛されています
 押してだめなら引いてみろの理論で試してみたのに、想像を絶する効果が出て俺自身が動揺している。

 階段を途中まで下り、六階から五階へ下りる途中の踊り場で足を止める。そのまま壁にもたれ、ずるずるとしゃがみこんだ。

 どくどくと心臓が高鳴ってうるさい。

 口元を押さえ、ゆっくり深呼吸する。ちらりと見上げた窓に映った俺は、透明なガラスに反射しているのに、はっきりと赤くなっていた。

 今日の真白は、一生懸命俺に話しかけてくる。少しだけ不安そうな顔をして、俺の気を引こうと他愛ない話をしたり、人のいないところでは袖を引いてきたりする。

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