チャラい彼は、意外と一途


何で、今その質問をしてくるかな……

 
「そうですよ。悪いですか」


「ううん、やっぱり一途なんだなって思うよ。ふゆちゃん振り向かすのは大変そうだ」


「そもそも好きになることはないでしょうから、頑張らなくていいですよ」


「酷いなぁ。そんなあっさり言わなくても」


この人にはきっと振り向かない。


でも、そう言い切れない……そんな気持ちもあって、こんな自分が嫌になる。


叶わないと分かってるから、佐野先輩のことを好きになろうとしてるのかな……


佐野先輩を湊君の代わりにしようとしてる……?


そうだとしたら、佐野先輩に失礼だ。


そんなことしたくない……!


「まぁ、ふゆちゃんだもんね。諦めるつもりはさらさらないけど。今日のデートで、ふゆちゃんをドキドキさせちゃうつもりだから……覚悟してね?」


最後にパチッとウインクを決めた佐野先輩に、不覚にもドキッとしてしまった。


流される…… 


それに、ドキドキさせるって何するつもりなんだろう……?


早くも不安になっていると、電車が停車して、水族館がある駅に着いた。


「着いたし、案内するよ」


私の手を握って歩き出した佐野先輩。


「何で、手を握るんですか?離してください」


「まぁ、そう言わずに」


でも、抵抗はある。


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