いつの間にか、君に恋していたんだ。
嫉妬


今、私は輝楽さんのいるT大に向かってる。


きっかけは太陽君の言葉。


「なぁ、伊鳥。ちょっと頼みたいことがあるんだけど、聞いてもらえる?」


「うん、どうしたの?」


「輝楽兄、珍しく忘れ物したんだよ。でも、俺今からバイト行かなきゃなんないから、伊鳥が届けてくれない?」


申し訳なさそうな顔してるけど、そんな顔しないで。


だって、私は……


「うん、全然いいよ。むしろ、輝楽さんに会えるなら、嬉しいから」


そう言った後で気づく。


最後のはいらなかったかな……


いや、でもさすがにまだ好きなんてないよね……?


私の自意識過剰だといいけど……


「ははっ、輝楽兄には敵わないな。じゃ、頼むぞ!」


「う、うん。分かった」


少し切なそうな顔してたけど、まさかね……


ということで、輝楽さんのところに行くことになったの。


それにしても、ほんとに珍しい。


輝楽さんが忘れ物したことなんて今までなかったのに……


今日は慌ててたのかな……?


そうだったら、なんか可愛い。


「伊鳥!」


「伊鳥ちゃん!」


そんなことを思っていると、私を呼ぶ声が後ろから聞こえてきた。


明らかに知っている声。


「由香ちゃん、肇さん」


後ろを振り向くと、やっぱり由香ちゃんと肇さんだった。


デート中なのか、2人の手は恋人繋ぎをしている。


< 282 / 326 >

この作品をシェア

pagetop