DOLCE VITA ~ コワモテな彼との甘い日々
無事な姿を見るまで、茫然とする頭の中を駆け巡っていたのは、後悔。
大事なことを伝えないまま別れるのかと思ったら、とてつもない後悔に襲われた。
何をしていようと、どんな姿をしていようと、関係ない。
辛島さんが、辛島さんである限り、
わたしがわたしである限り、
わたしが帰りたいと思う場所が彼で、
彼が帰りたいと思う場所がわたしである限り、
わたしたちはずっと一緒にいられるのだから。
耳を傾けるべきものは、
悪意にまみれた意地悪な言葉ではなく、静かな夜を満たすコオロギの鳴き声。
心を抉る残酷な批評ではなく、美しい風景を撫でる風の音。
嫉妬にまみれた嘲笑ではなく、明け透けな笑い声。
幸せな溜息、穏やかな寝息、唇を啄む音、甘い吐息、
「もか」
そして、愛する人が自分の名を呼ぶ声だ。
「もか……好きだ。嫁になってくれ」
「はい。ただし、現地妻も、ハーレムも作らないと約束してくれるなら、ですけど」
「はぁ? 現地妻ってなんだ? ハーレム? 三百六十五日、もかをかわいがらなきゃならねぇんだ。んなもん作ってる暇はねぇよ」
「さ、三百六十五日は、ちょっと……」
「頑丈なものを建てるには、基礎がしっかりしてねぇとダメなんだよ。手抜き工事は厳禁だ」
「でも……壊れたら?」
ふと口をついて出た問いは、わたしの心の隅に残っていた最後の黒いシミ。
辛島さんは、何を悩む必要があると言いたげに、笑い飛ばした。
「そんときゃ、建て直すに決まってんだろ。俺の仕事は、建てて、壊して、また建てることだ。で、建て直す時は、前よりもっと頑丈で、もっといいものを建てる。けど……まずは、俺たちの最初の家を建てないとな!」