DOLCE VITA  ~ コワモテな彼との甘い日々


ぽつり、ぽつりと年の始めからの出来事を順番に話す間、辛島さんは短い相槌を打つだけで、口を挟むことはなかった。

感情が昂って、言葉に詰まっても、わたしが落ち着きを取り戻し、再び話し出すまで辛抱強く待っていてくれた。

わたしの身に起きたことは、世にも稀なことではない。

世間の厳しい荒波にもまれ、信頼していた人に裏切られ、心が粉々に砕け散ってしまった人は、きっとわたしが初めてなんかじゃない。

砕け散ったかけらをかき集め、再生していく人だって、たくさんいる。

けれど、遥か遠くの海面に躍る陽光を眩しく眺め、再びそこへ浮かび上がることを切望するよりも、諦めて、海底に留まるほうが楽だった。

仕事でも、それ以外でも、新たに知り合う誰かを心の底から信じるなんて、二度とできそうもなかった。


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