DOLCE VITA  ~ コワモテな彼との甘い日々



「桃果ちゃんっ!」


電話を切った梅乃さんは、再びどこかに電話を架け、瞬く間に閉店の作業を終える。
それから、まともに歩けないわたしを引きずるようにして、やって来たタクシーに乗り込んだ。

建設現場は、安全第一。
事故が起きないよう綿密に計画を立て、細心の注意を払って作業が進められている。

しかし、重機を使用したり、時として危険な場所でも作業したりしなくてはならない特性上、事故が起きる危険は常にある。

どんなに頑丈な人間でも、何十トンもある資材や重機、土砂に敵うはずもない。

何が起きたのか把握することもできず、茫然としたまま辿り着いたのは、市の基幹病院でもある立見総合病院。

ナースステーションで告げられた個室に足を踏み入れれば、そこには予想とちがう光景が広がっていた。


泣きじゃくるタツ。

呆れ顔のヤスにぃ。

ベッドの上にいるトラさんは……




右腕にギプスをして、頭に包帯を巻いてはいるが、重症のようには見えない。



「もか?」


わたしの顔を見ると、まるで「どうしてここに?」とでも言うように大きな目を丸くした。



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