冬よ花弁「序」。彷徨う街で君を探すなら

幻が漂着する郵便局

自分が出来る事は 少ない。


どんなに足掻いても、
シオンが消えたマイケルを
探し出す事など皆無だと
初めから
理解していて。

「自分の生き方でさえ解らない
ままなのにねっー。結局、
自己満足なんだと、思うけどっ 」

シオンは、
両脇を固める双子の、
クールイケメンの腰に
揺れている 法螺貝を 指さして

「アタシだけじゃないって!
ちょっと救われるよねっ?!
それ、本当に練習するのっ?」

呆れた顔を 反対側に向ける。
双子の片割れ
クールビューティ美人は、
そんなシオンに、
ニッコリ微笑むだけで、
yesと答えたのだと
理解する。


今年は異常な程寒く、
記録的な雪がニュースになる中、
この島にも

チラチラと雪が降りだした。

「いくら、法螺貝が 遠ーくっ、
聞こえるからって、吹きながら
マイケルを探すなんてっ、、」

白い息を吐きつつ
言いながらも、
シオンも、本当は
悪足掻きついでに、今この島に
流れ着いたようなものだ。

瀬戸内海には大小多数の島が
ある。
国内の島の数は2000程。


「気休めも、いいところだね、」

それでも、
こんなに変わった島が
あるだろうかと シオンは
飛沫を上げて冬の海を漕ぐ
船での
ガイドを見て思った。

島は、かつて
金毘羅大権現の旗をつけて
江戸や大阪の港を出入りする
北前船の寄港地として
栄えた。

国内最初に開設された
海運学校があり、
今は記念館になっているが、
マリーナスクールの
面影色濃い西洋建物も現存する。
が、
なにより、特徴的なのは
島の形態。

3つの島が砂州で1つに繋がる、
まるで
三つ巴のスクリュー羽な
形をする。

「航海の神様、
『 こんぴらさん』の
巨大スクリューみたい、
不思議な島だよねっー。」

そういいながら、
シオンは雪空に
赤く悴む指で、
島の形を描いた。

「海の島ですね、ヘンですが。」

双子のクールイケメンが、
港からの道々に無数にある、
『ブイ』を使ったアート?を
見て、シオンに同意する。

『ブイ』には顔が書かれて、
頭には雪が乗ると、
さながら
笠地蔵だとシオンは
ふと、思ってニンマリする。

「なんだろっ、あ、アレだ!
紀伊の山村の 案山子とおんなじ
雰囲気なんだっ!海バージョン」

そして思い出したように
電話で、写真を撮りまくるのだ。


「シオンさん、話ズレてますね」

ヨミ先輩にSNS送ろうっーと
真顔のシオンに

双子のクールビューティは、
苦笑しながら、
さっき見た
記念館の漂流物のアートとかを
話題に出し、
双子の片割れのフォローすれば、

「最たるのが、ゴールですよ。」

と、意味深に
送信する、シオンを眺めた。

「過去未來を漂流する
手紙が吹き溜まる郵便局ねー。
まさか、ここに来るとか
考えもしなかったなあーっ。」

シオンは、ついっと
集落の道の先にある 建物を
遠目に捉えた。

島らしく、
低い屋根の民間が
所々ある、コンクリートの細道。

隣の島とは違い、解放感のある
雰囲気は『ブイ』地蔵の愛嬌か。

「もとは、アート作品。です?」

クールイケメンが
笠を片手で上げた。

さすがに、この島でお遍路装束は
双子だけで、
さっきから
人懐っこい島民が、やたら
双子を揶揄していた。

今も、
『よぉー!お遍路さん!』と、
やたら元気な
島おじいさんが
前から声を掛ける。

双子の代わりに
シオンが満面の笑顔で
ロイヤルスマイルで
手を振るのだ。

「芸術祭の参加してたっ、
インスタレーションアートだよ!
でもね、この島にあった郵便局の
跡をそのまま使ってっ、局長も
元島の郵便局長なんだよ!」

もう何年か前のエントリー作品
だった彷徨う手紙の終演地と
コンセプトされた郵便局は、
芸術祭後も残され、

今も全国から
手紙が行き着き流れて続け、
200だった手紙は
2万を超え 尚届けられる。

「この夏に、マイケルにも
話ていたんだよっ!見に行き
たいねって!でも たくさん
見る所あるからっ、そのまま」

別のところを回って
タイムオーバーになったんだよね
と、シオンは
双子に
郵便局のドアを
示した。

一見すれば、
普通の平屋の
島の郵便局だが、
ガラス扉には、
この郵便局の意味する
散文が 刻まれている。

1番にシオンが、
1歩中に、入る。

「あーっ!局長さん!」

シオンは 思わず声を上げた。

目の前の古いカウンターに
制服をきっちりと纏う
白髪で 日に焼けた
笑顔の老男性が
迎えてくれる。

「ようこそいらっしゃいませ。」



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