誰よりも近くで笑顔が見たい

俺なら

はぐれちゃった……。


どうしよう。


とりあえず、人の流れを横切って人の少ないところへ出る。


でも、みんなを見つけることなんてできなくて。


あ、スマホで連絡すればいいんだ。


それに気づいてスマホを出そうとした時、背後から声がした。


「蘭、だよな?」


上原くんかと期待した。


でも、私のことを名前で呼び捨てにする人なんて、家族となのちゃん以外でただ1人。


那谷(なたに)先輩。


私の、はじめての彼氏で、初恋の人。


そして、私が男の人が怖くなった原因の人。


「久しぶりだな。元気だったか?」


わかりやすいくらい、取り繕った笑みで私に近づいてくる。


無意識に少しずつ、後ろに下がるのに那谷先輩は、それより大きい歩幅であっという間に私との距離を詰める。


「なあ、俺の話、聞いて」


そう言いながら手首を握られて身体がこわばる。
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