料理男子、恋をする


すっぴんだから、と何時ものニット帽とマフラーに加えてマスクまでして、薫子は玄関の外で待って居た佳亮の前に現れた。マンションのエントランスを出ると北風が冷たい。マスクが鼻まで被ってて鼻があったかい、と薫子は笑った。

何時ものコンビニでおでんの具を探す。

「薫子さん、何が好きですか?」

「私はねー、大根とー、つくねとー、厚揚げとー、白滝。あっ、玉子もいいよね」

薫子が佳亮の顔を見てふふ、と微笑った。多分最初の時の煮卵の事を思い出している。

「僕も大根と玉子がマストで、あとは白滝とかはんぺんとか、ロールキャベツも好きです」

「あっ、ロールキャベツも良いよね」

それぞれ器に好きなものを入れて会計をして貰う。ビニール袋に入れて貰って、コンビニを出ると北風が吹きつけて一気に顔が冷たくなった。

「あはは、薫子さん、マスクは正解ですね。僕、顔が冷たいです」

「手も冷たくなるね。近いからと思って手袋してこなかったけど、結構冷えてる。おでん美味しそう」

ゆらゆらと二人でおでんの入ったビニール袋を揺らしながら歩道を歩く。佳亮はちょっと考えて、おでんを右手に持ち帰ると、薫子の空いてる左手を掴んで自分のコートのポケットに入れた。
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