料理男子、恋をする
(そういえば、おとんたちに料理を振舞わなあかんって言うてたっけ……)

やはり薫子の頭には結婚があるんだろうなあ。意外と現実が迫ってくる感覚に、背筋を伸ばした。

「そうですね…。兎に角、クリスマス会のことは、一度薫子さんに聞いてみます」

佳亮が応じると、織畑は是非そうしてちょうだいな、と微笑んだ。



出張料理の日。食卓を二人で囲んで他愛のない話をしていた。佳亮がクリスマス会のことをどう切り出したもんかと思っていたら、どうしたの? と逆に様子を窺われた。

「薫子さんには隠し事が出来へんなあ。……薫子さん、クリスマスの週、何か予定ありますか?」

苦笑気味に尋ねると、薫子は目をぱちりとして応えた。

「二十三日は毎年会社の子とクリスマス会をするの。クリスマスイヴは、ほら、うちの会社女性が多いでしょう。空けてあげないと可哀想だから。何かあった?」

織畑から誘われたクリスマス会はクリスマスの前の週の土曜日だった。誘ってみたらどう思うだろう。

「……実は、その前の土曜日にうちの会社でも有志でクリスマス会をやるって話なんですが、外部の人間も参加していいらしくて。薫子さんさえ良ければ、一緒に参加しますか? 織畑さんは薫子さんに会いたいって言うてました」

薫子は佳亮の話に土曜日…、と呟いて何かを少し考えた後、私なんかが行っても良いのかしら、と不安そうにした。やっぱり知らない人がいっぱいの場所は緊張するだろう。佳亮が薫子の気持ちを汲んで、やめておくかと口にしようとした時、でもはるかさんには会いたいわ、と薫子が言ったので、一緒に悩んでみる。

「織畑さんは佐倉さんを連れてくるって言うてました。知らない顔が多いかもしれませんが、知ってる人もいれば少しは安心しますか?」

「佐倉さんも参加されるの? それじゃあ、勇気を出して行ってみようかしら」

ちょっと安心したように薫子が微笑ったので、佳亮も安心した。自分も初めて参加するから、どんなパーティーになるのかを伝えられないのが申し訳ないが、織畑が薫子を一緒にと誘ってくるくらいだから、きっと和気あいあいとしたクリスマス会じゃないかなと想像した。


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