料理男子、恋をする

そしてクリスマス会の土曜日。薫子を迎えに行って会場のレストランに行こうとしていた。佳亮も初めて参加するので何を着て行ったらいいか分からず、あまり砕けすぎないよう、紺地に白のピンストライプシャツーにグレーのチェックのジャケット、黒のスキニー、ベージュのコートといつも使っているマフラーを身に着けてきた。

薫子の部屋を訪れると、もう支度が出来ていて、何時もの黒いコートに黒にラメの入ったロングワンピースを着ていた。髪の毛が短いので耳元のイヤリングがIラインになっていて華やかさを演出している。きっとこういう格好は、あんなお屋敷のお嬢さまなんだから余裕なのだろう。佳亮の方がネクタイをしていない分砕けすぎていて、ちょっと隣を歩くのに気が引ける。

「このワンピースも紅葉狩りの時と一緒で兄に見繕ってもらったのよ。自分じゃ全然分からないから」

そう言う薫子に、似合ってます、と笑顔で伝えた。

「ありがとう。佳亮くんも何時もの雰囲気と違うわね。その紺のシャツ、とても素敵だわ」

「あ、ありがとうございます……」

服装を褒められるというのは、くすぐったいものだな。料理ならいくら褒められても何とも感じないのに。
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