最後の悪夢
「いっちゃん!!」
誰かの名前を呼ぶ低い声がして。
フロントのホールに広がる声。彼は何度もそれを叫んでいた。
その姿を捉えるまでそう時間はかからなかった。そして彼を私は知っていたんだ。
「名木田(なぎた)くん」と私が呟くと、凛上が反応した。
「名木田?」
人脈の広い凛上のことだ。
恐らく知り合いか、友達か。
私と同じクラスの人だ。
……同じクラスの人はもう、誰もいないと思っていた。あの朝、学校で私よりも先に名木田は、荷物を取りに来ていたのかも。
そして移動するバスのなかにはいたけど私が気づかなかったのか。
こんなに声をあげて何事かと私達が顔を見合わせていたら、名木田は私達を見つけるなりこちらに駆け寄ってきた。
「凛上。いっちゃん知らない? イツキ」
「……イツキ…………?」
凛上の顔がひきつるのが分かった。