赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―

いつもの優しい笑みを向けられて、ボンッと顔が熱くなった。

顔を窓に向けて熱とドキドキを冷房の風で冷ます。

すると……。



「あのさ、こないだ言いそびれたことなんだけど…………沢村先輩には気をつけて」

「えっ……？」



ガタンとバスが揺れて、よろけそうになった。



「あの人、礼儀正しくて人当たりも良くて、一見人格者に見えるけど……取って貼り付けたような笑顔を浮かべてて、本心が全然見えなかった」



「だから本当に気をつけて」と再度念押ししてきた潤くん。


何それ……。

先輩が話してくれたことも、優しい笑顔も、全部偽物だって言いたいの……？

潤くんだって本心で笑ってなかったのに。

嫉妬心抱いてるからって、そんな言い方しないでよ……！



「早く治したいんだろうけど、元は俺に頼んだんだから、わざわざ他の人の手を借りなくても……」

「潤くんには、私の気持ちなんてわからないよ……っ」

「あ、ちょっと！」



潤くんのバカっ、わからず屋……っ。

バスが停止した瞬間、彼の制止を無視して逃げるように下車した。