赤い瞳に今日も溺れる―飢えた漆黒の吸血鬼―


寝顔を見た途端に涙が溢れてきて、彼にギュッと抱きつく。


病院で目を覚ました時のことを思い出した。


ケロッとしてた私に対して、お母さんと千冬は今までに見たことがないくらい焦っていた。


あの時千冬は『死んだかと思った』って口にしてて、大袈裟だなぁって思ったんだけど……今なら、その気持ちが痛いほどよくわかる。


丸1週間、1度も目を覚まさなかったんだ。

死んだらどうしようって焦ってしまうのも無理はない。


潤くんはあの場にいなかったけれど、もしかしたら私と同じように不安を感じていたのかな。



「もう逃げないから……っ、お願い……」



2度と顔を合わせられなくなってしまったら。

このまま私の前から消えてしまったら……。


恐ろしい考えがよぎり、怖くなってまた涙が溢れ出して、抱きしめる力を強める。



「っ……好きだよ」



そのまま涙声で想いを告げて、静かに眠る彼の唇に自分の唇を重ねた。
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