あなたに触れたくて

日直

次の日の朝、ハルノと学校へ向かっている途中、私は勇気をだして聞いてみた。
「ハルノが思う、恋人と友だちの違いって何?」
ハルノは
「そりゃ、手繋ぎたいとかキスしたいとか思うことじゃないの?」
ドヤ顔でそう答えた。
やっぱりそうだよね。
私がおかしいんだ。
早く克服しなきゃ。
そんなふうに思った。
「そうだよねー。友だちが昨日そうやって聞いてきたからさ。私わかんなくて。」
ハルノに嘘をついてしまった。
どちらかと言えば男好きの分類に入るハルノに相談したところで信じてもらえる話ではないと思った。

さりげなく話題をかえつつ、私たちは学校に着いた。
そこで、思い出す。
「あっ、今日日直だった。職員室行くからハルノ先行ってて。」
そう言って私は走って職員室へ向かおうとした。
「いったっ…」
誰かとぶつかってしまった。
相手も日直だったのだろうか、ぶつかった衝撃で日誌や、配布物が散らばってしまった。
「ごめんなさい。」
そんなことを言いながら、時計を見た。
日直やり直しを逃れるための時間まであと1分。
あと1分以内に職員室の先生のところまで行かないとやり直しになってしまう。
でも拾わなきゃと思い、大急ぎで拾い、相手に渡して走って職員室へ走った。
「ちょっと待って…」
ぶつかった相手がそう呼び止めたのも聞こえないくらい急いで行った。
結局、日直はやり直しになってしまった。
たった1秒過ぎただけなのに、細すぎる担任は許してくれなかった。
ほんと最悪、そんなことを思いながら教室へ戻ると先に支度を終わらせていたハルノが、
「さっきホリタくんが探してたよ。なんか渡したい物があるとか何とか。でも、ホリタくんと話したことなかったんじゃなかったっけ?いつの間に進展してんのよ、キャー。」
と言ってきた。
1人でテンション上がっているが、私の頭の中にはハテナだらけ。
「今も話したことないんだけど。こわっ。」
こわっというのは本音だった。
確かにかっこいいと思っているホリタくんだが、話したことない人に探されるのはあまり気分は良くない。
「めんどくさいからいいや。」
と言って、私はずっと背負っていたリュックサックを下ろした。
そこで気づく。
「あれ、カバンがない。」
今日私はリュックサックと手提げカバンを持ってきたはず。
いや、それは昨日だったっけ。
もういつも同じように過ごしてると分からなくなってくる。
まぁいいや、と私はそれで済ませてしまった。
名前も書いてあるしもし落ちていたりしてた誰が届けてくれるだろう。
そもそもあんなに大きいものを落とすわけが無いだろう。
支度が終わり席に着くと共にチャイムが始まった。
─キーンコーンカーンコーン─
朝の会が始まった。
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