あなたに触れたくて

葛藤

電源を入れてから起動するまでに、約1分半。
何かをしながら待つには短く、何もしないで画面を見ているだけでは長い時間だ。
私はただ何もしないで画面を見ていた。
しばらくして出てきた見慣れた待受画面。
特に好きな物とかがない私の待受画面は、買った時からの初期設定のまま。
よく分からないけどシンプルな待受画面。
大人っぽくて良いかなと思っている。
しかし、待受画面にはシンプルな写真以外、何もなかった。
ホリタくんからの連絡の通知も何もかも。
一体、私ったら何を期待しているんだろう。
というか、今ホリタくんは何をしているんだろう。
お風呂に入っているのかな。
夕飯を食べているのかな。
もしかしたら勉強をしているのかな。
ホリタくんって頭良いのかな。
何かを考え出すと全部ホリタくんに繋がっていく。
全然関係ないことを考えていてもホリタくん行きだ。
まるで、南極大陸から日本行きの電車のようだ。
海はどうやって渡るの。
きっと適当に気づいたら渡っているんだろう。
そんなふうに私の頭の中も適当にホリタくんに繋がっていった。
スマホの電源をつけたついでだったから、私は検索フォームに『男の人 触られるのが怖い』と入れてみた。
1番上に出てきたのは、『男性恐怖症』の文字。
別に怖いわけじゃないんだけどな。
と思いながら、そのサイトを開いてスクロールしていく。
すると、治療方法という文字が現れた。
1カウンセリング
2自ら行動する
1番はもうやった。
2番もやったけれど今のところ効果なし。
やっぱり私のことを指しているわけじゃ無いのかな。
それとも自分は治らないのかな。
もし、治ったらどうする?
ホリタくんにやっぱり付き合いましょうって言う?
なんで?ってなるよね。
そしたら説明しなくちゃいけなくなるよね。
また嘘はつきたくない。
ということは…
もう付き合えない?
じゃあもし治らなかったら?
この先誰とも付き合えない。
もちろんホリタくんとも。
わかってくれる人がいたとしても、説明をしなくてはならない。
どうなったにしろ、私がホリタくんを振ったせいでもう、ホリタくんとは一緒になることは出来ないんだ。
「はぁ…」
スマホの画面を消しながらベッドに倒れ込んだ。
こうして少しすると、お母さんが、
「夕飯できたよ〜」
と呼びに来たのだった。
< 20 / 26 >

この作品をシェア

pagetop