契約夫婦のはずが、極上の新婚初夜を教えられました
 こんなチャンスそうそうあるわけではないし、いろんな人と関わって多くのことを学びたいと思う気持ちは嘘じゃない。
 
 どうせ断れないのなら、いっそ割り切って挑戦してみるのも悪くない。大吾さんも一緒というのは心配の種だけど、物は考えようで味方がいてくれると思えば心強い。
 
 そうと決まれば斎藤さんの補助に日本酒の新ブランドチームでの仕事、どちらもおろそかにならないように頑張ろう。

「わかりました。お役に立てるかわかりませんが、精一杯努めさせていただきます」
「よろしく頼む、八重」
 
 柔らかい笑みを湛えた大吾さんが手を差し出し、それに自分の手を合わせる、そっと握手を交わすと、彼との心の距離がまた少し近づいたような気がした。





< 86 / 172 >

この作品をシェア

pagetop