秘密のschooldays

「……え、…と」

「…いや、なんか、あの、…………ちょっと前に、…告られてて……」

丁度、隣同士の傘に篭るような小さな声で、優斗が言った。えっ、と驚く沙耶もまた、その声を注意して小さくした。

「……そ、なの? ……ええっ? じゃあ、あのコ、放っておいたら駄目じゃない」

まるで内緒話みたいに、話しかけてしまった。でも、こんなこと大声で言うことじゃないから、傘の中で話すのが、凄く空気に合っている。

「…いや、まだ返事してないし……」

「なんで? 嫌いなコなの?」

「や……、そうじゃなくて……」

優斗が言い澱む。耳を赤くしたっていうことは、満更でもないのだと思うのだけど、何を躊躇っているのだろう?

沙耶の疑問を正確に理解して、優斗がぽつぽつと話を始める。傘を差したまま、校舎の横で立ち話なんて目立つから、二人は駅に向かってゆっくりと歩き始めた。

「…なんか、時々見学に来るなー、とは思ってたんだけど」

ラグビーはグラウンドの肉弾戦だから、格闘技好きの男子ならともかく、女子が見学に来るなんて思わなかったらしい。だから、一時部内でも話題になったのだそうだ。部員が気にする様子を見せ始めてからは、少し回数が減ったのだという。それでも時々、例えば他にギャラリーの居るような練習試合のときなんかは、友達と見に来てくれていたのだそうだ。

「練習試合?」

その話を聞いて、沙耶の中でクリアになった映像があった。芽衣と二人で芝に座って優斗の勇姿を見に来たときに、そういえばギャラリーの中に女の子が居た。確か、髪の毛が長くて、…そう、みつあみをしていたと思う。

一瞬閃くと、次々に思い出す景色がある。ピンクの水玉の傘。制服の背中に揺れていたのは、緩いみつあみだった。あれは少し前のことだ。やっぱり優斗と一緒に帰ろうとしていたときに、自分たちを追い越していった後ろ姿。

「え…? ええっ? 優斗、まさかその時から……」

「違うって! 断じてそんな風に思ってなかったから!」
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