余命38日、きみに明日をあげる。

「どーするかな……」
 
ベッドに寝転びながら、突き返された進路調査票をぼーっと眺める。
 
俺は医者になりたいのだから、医学部のある大学の名前を書いて、堂々と出せばいい。

俺の学力なら、誰もが納得してそれを受け取るだろう。
 
だったら、なぜ「検討中」なんて書いたのか。

……そんなのわかってる。
 
揺るがない決心をしたくせに、どこかで揺れている。

そして、それを認めたくない自分がいる。

……情けねえ。
 
『琉生、パティシエになるのやめたの?』
 
親経由で伝わったのか、あるとき莉緒から言われた。
 
莉緒のためだなんて偽善を押し付けないために、『テレビで見た医療ドラマに憧れた』なんて言った。

『そっか』
 
そう言って笑った顔はいつもの莉緒だったが。

カンのいい莉緒のこと。もしかしたら気付いているかもしれない。

それでも『医者になるのは私のため?』なんてことは言ってこなかった。

……言えないよな。
 
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