愛は知っていた【完】
第二章 戸惑いモラトリアム
俺はあの出来事を境に、朱里に向けた恋愛感情と決別したはずだった。

そう……“はず”だった。
物理的距離を隔てられることに安心しきって、生半可な覚悟に縋って、その気になっていただけだったと思い知らされたのは、情けないことに俺が故郷を発って半年足らずの話となる。

あれから白井先生に勧められ入学した高校で野球を始めた俺は、年相応の日常を楽しんでいた。
周囲のライバルとも呼べる仲間達と張り合いながら部活に精を注いで、それなりに学業も充実させて、部活が休みの放課後があれば絶好のチャンスと言わんばかりに友人らと街に繰り出して、ファーストフード店で駄弁ったりゲーセンに行ったり、文句の零しようのないほど青春を謳歌していた。

最初のうちは慣れなかった土地での環境にもようやく馴染めてきた頃、朱里の夏の長期休暇を利用して家族がこちらに遊びにきた。
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