君のブレスが切れるまで
「失礼します! 赤坂 奏さんの取り調べを即刻止めろとのことです!」
「何? 誰がそんなことを言った?」
「この件について事件性はないとの事で、署長自らが……」
「っ……なんだと⁉」


 急遽、取り調べが終わりを告げることとなる。
 私を尋問していた警察の人は苦虫を噛み潰したような顔をしていて、本当に私が悪いとでも思っていたかのようだ。
 でもどうして、急に取り調べが終わったのか理解できない。署長がとは言っていたけど、私に警察の知り合いなんていない。


「それと赤坂 奏さん、お連れ様が署内入り口にてお待ちになっています」


 先程入ってきた警察の人にそう言われ私は首を傾げた。


 お連れ様って、いったい誰?


 頭の中で目ぼしい人物を探すとそれはすぐに出てくる。私のことを知っている人なんて、もう彼女くらいしかいなかった。
 そんな、まさか……という気持ちだ。あり得ないわけではない、でもどうして、なぜ? という考えだけが先走る。


 私は警察官数名を置き去りに、取り調べ室を後にする。
 初めての署内だけど先程歩いたばかりの場所だ。入り口までならすぐに辿り着ける。
 もう日が落ちかけている夕方、退社する時間だと思うのに廊下を行き交う人は多い。この細い廊下で警察の人や一般の人にぶつからないようにしつつも、足は極力急がせた。
 それから程なくして署内フロント、開けた場所へと出ると、そこには見覚えのある後ろ姿が目に映りこむ。


 ロングの黒髪、黒いセーラー服に身を包んだ女の子。
 彼女は赤い傘を手に持ち、外の景色を見ているのか自動ドアの向こう側を向いたまま静かに佇んでいた。


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