君のブレスが切れるまで
「は? 一万だけ?」
「まだ持ってるでしょ?」
「他に隠してると痛い目に合うよー」


 隠してなんかいないし、それが今の私の出せる最大のお金だった。財布は家に置いてきてしまっている。もっとも、もう小銭程度しか入っていないが。


 何なのだろう、この人達のがめつさは。


 既に今日、私の財布からは定期代を抜かれている。挙げ句、今渡したお札までも奪って『一万だけ?』かと聞いてくる。その一万円だけでも私はとても苦労したと言うのに、この女はこれ以上を望むというのか。どれほどまでに欲深いのだろう。
 出せないものは出せない。私は目線を下げ、今日行った援助交際のことを正直に告げた。


「…………してないの……だから、一万円だった」
「ふーん、あっそ。んじゃ、もう一回誰か引っ掛けてこい」


 あやかは冷酷にそう言い放つ。私は驚き、顔を上げるが女の冷たい目は私を見下すように嘲笑っていた。


 なんで笑えるの……無理だよ。あんなのをもう一度なんて……怖くてできない……もうできないよ。


 その何を考えているのかわからない笑顔に恐怖し、首を振り否定を示す。
 だが、許されるわけがなかった。後ろの一人が笑いつつ声を上げる。


「あやかー。じゃあこの画像どうしよっか?」


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