政略結婚から始まる蜜愛夫婦~俺様御曹司は許嫁への一途な愛を惜しまない~
 思春期に入ると、今度は口を利いてくれなくなった。この頃に両親から私と零士君が婚約関係にあることを聞かされたから、もしかしたら彼も知ったのかもしれない。

 嫌いな私と将来結婚することが決まっているんだもの。だから口を利いてくれなくなったんだと思った。

 それから私たちの距離はますます広がるばかりの一方で、社交の場では婚約者として振る舞っていた。

 お互い嫌いでも、自分の立場をそれぞれ理解していたし、大きくなればなるほど、結婚は自由にさせてもらえないと諦めていたから。

 他人の前では優しい声で「凛々子」と呼び、常に私を気遣う。だけどふたりっきりの時は、私を見ようともしない。それがとても寂しくてたまらなかった。

 小さな頃から整った顔をしていて可愛かった彼は、成長するにつれて大人の男性へと変わっていった。

 同じくらいの背丈だったのにあっという間に追い越され、高校生になる頃には身長は一八五センチになった。私も一六〇センチと高いほうだけれど、零士君と並ぶと見上げるほど。
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