溺愛予告~御曹司の告白躱します~

「心の汗が出たってさ、あんまり綺麗な表現じゃないよね。汗って」
「…莉子先輩」
「なんかもっと良い言い方ないかね。心の肉汁とかどうかな」
「先輩って、案外泣き虫ですよね」

ダメだ。
全然ノッてくれない。ツッコミ不足で肉汁も止まるわ。まだ止まってないけど。

これが水瀬だったらきっと「お前はハンバーグか」とか「肉汁のどのへんが綺麗な表現なんだ」とか、呆れた顔をしながら笑ってくれるんだろうな。

そう考えた瞬間、あの綺麗な女性と歩いていた水瀬が脳内に蘇る。

きっと彼女ならこんなバカみたいなことは言わないし、水瀬だっていちいち発言にツッコミを入れるなんてこともしないだろう。

王子にツッコミのスキルは不要なのだ。
もちろん彼の隣に立つ姫にも、ボケのスキルなんてものはいらない。

必要なのはきっと、王子に見合う美しさ。そして帝国に嫁ぐに相応しい身分。
きっとそれだけ。

「だからこれは肉じゅ…っ」

拾われないボケを更に繰り出そうとすると、頬を包んでいた手が肩に回り、ぎゅっと抱き締められる。


「やっぱり…俺にすればいいのに」
「…爽くん」
「本当に、俺じゃ駄目ですか?」

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