溺愛予告~御曹司の告白躱します~

会社帰りに連れられてきたのは水瀬が住む超高層マンション。

もちろん水瀬ハウスの物件。『都心の中で最高の住み心地を』というコンセプトのもと建てられたらしいマンションは、エントランスの前に立っただけで庶民とは住む世界が違うと足が竦む。

爽くんが風邪をひいた時に彼のマンションを訪れた時と違い、ひとりじゃないのがほんの少しだけ救いだった。

大きなエントランスをくぐると、そこはマンションというよりはホテルのよう。
何組もソファやテーブルが置かれていて、壁際には本棚まである。

爽くんのマンションでも驚いたけど、ここもコンシェルジュサービスがついているらしく、五十代くらいの男性が「おかえりなさいませ」と声を掛けてきた。

それに会釈だけして通り過ぎ、最上階直通のエレベーターに乗り込む。

三十八階まで上がったエレベーターを降りると、マンションの廊下とは思えないほどふかふかの絨毯が敷かれている内廊下。

玄関を出てもお天気がわからないんだななんて呑気なことを考えていると、カチャリとルームキーの開く音。

「佐倉、入って」
「…オジャマシマス」

玄関で靴を脱ぎ、左右にいくつ扉があるのかわからない廊下を抜けた先のリビング。

まず目に飛び込んでくるのは壁一面の大きな窓。
カーテンがないところを見ると、きっとボタンひとつでブラインドが下りてくるんだろう。

会社の社食で見る景色よりも高く、最寄り駅は地下鉄なおかげで線路も見えない。
広がるのはキラキラと素晴らしい夜景だけ。

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