溺愛予告~御曹司の告白躱します~

適当な食べ物と飲み物を買ってきてほしいというお願いの電話だった。

男友達とか歴代の彼女に頼めないのかという疑問も浮かんだけど、前者はきっと何を買ってくるのか不安で頼めず、後者は余計な揉め事の種になると踏んだんだろう。

「…もう、しょうがないなぁ。住所メッセージで送っておいて」
『すみません…。めっちゃ喉乾くんで飲み物多めでお願いします』
「大量の水分って重いって知ってる?」
『だってぇ…』

図々しく頼んでくる後輩にわざと冷たい声で言えば、尻尾を垂らしたようにしょんぼりとした様子が浮かんでクスッと笑えてしまう。

「大丈夫、ちゃんと買っていくから。それまで寝てて。わからなかったら電話するから」
『はい。お願いします』

通話を終了させてハッとする。
途中からすっかり水瀬といることを忘れていた。

「あ、あのね」

真横にいたのだから、いくら小声で話していた所で会話は筒抜けだったはず。
それでも事情を説明しようと水瀬の方を向き直ると、向けられたことのない鋭い視線が私を貫いた。

「家まで行くの?」
「う、うん。部屋には上がらずに届けたらすぐ帰るけど」

なんでこんな風に言い訳してるみたいになっているのか。
何も悪いことなんてしていないはずなのに、背中を嫌な汗が伝う感触にどこか後ろめたさを感じている気になる。

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