溺愛予告~御曹司の告白躱します~
ーーーーーー……。
それはほんの一瞬の出来事で、ともすればお酒の入った頭が見せた夢か幻だということも考えられる。
後頭部に刺さるうるさい視線を感じて振り返ると、隣のテーブルで旦那様になる人のことを楽しそうに話していたはずの亜美がこちらを見てニヤリと笑っている。
そのことが数秒前の出来事が夢でも幻でもない事実だと知らせてきた。
「……っ!?」
思わず握られていた自分の手を引っこ抜いて口元を覆う。
驚きに目を見開き、言葉なんか何も出てこない。
ただただ目の前の水瀬を見つめることしか出来なかった。
「勘違いじゃないって言っただろ」
あの日、考えてることを当ててやろうかと言った水瀬が放った一言。
ずっとずっと、私は『勘違いならいい』って思ってきたのを見透かした爆弾の投下。
「逃げないで。俺の気持ち、ちゃんと認めて」
真剣な眼差しの中に、懇願の色が浮かぶ。
それだけ本気なのだと、耳まで真っ赤になった私に理解させるように瞳を逸らすことを許さなかった。
「佐倉が好きだ」