純潔花嫁―無垢な新妻は冷徹社長に一生分の愛を刻まれる―
幸福初夜

 格子状の窓の向こうの庭に、色とりどりの光を纏ったオリーブの木が見える。

 宵闇に輝く幻想的なクリスマスツリーは、昭和の時代に入って間もない今は定番となったが、一般庶民とは少し違う世界で育った(すい)にとっては目新しいものである。

 固めでやや黄みを帯びたバタークリームのケーキを作ったのも、好きな人から夢かと思うほど素敵な贈り物をもらったのも初めてだ。

 しかし、熱い口づけをされながら今にもベッドに押し倒されそうになっている彼女は、ケーキの味などすっかり忘れてしまった。口の中で感じるのは、艶めかしく動く舌の甘さだけ。

 薄桜色の布地に小紋柄が描かれた着物が、シーツの上で乱れている。唇を重ねている合間に、帯留めはすでに取られていた。

 睡を翻弄する男は、桜色のぽってりとした唇を軽く吸って離れる。見目麗しい彼は、とろんとした瞳で頬を紅潮させる妻を見つめ、満足げに微笑んだ。

 そして、帯から伊達締めまで順に器用な手つきで解いていく。胴回りを締めつけるものがなくなった彼女に跨るようにして膝をつき、性急にベッドに沈めようとした。
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