【改訂版】新まりなの日記

【卒業式】

(平成2年)

3月1日・雨

アタシは、進路未定のまま卒業式の日を迎えた。

手にした卒業証書は、白紙同然の紙切れ一枚である。

卒業証書授与のあと、賞状伝達があった。

賞状伝達は、在学中にスポーツで優秀な成績を修めた生徒や文化の面などで功績をあげた卒業生に賞状を授与することである。

ショージョーなんか、アタシにはネコにコバンよ…

続いて、ファイナンシャルプランナー3級の資格証書の授与から英語検定と漢字検定の資格授与などがあったけど、資格なんかアタシにはネコにコバンよ…

卒業式が終わった後、アタシは学校から逃げ出した。

学校から逃げたアタシは、いよてつ松山市駅へ向かった。

コインロッカーに入れていたキャリーバッグを取り出した後、あらかじめ買っておいた切符をにぎりしめて改札を通って、いよてつ高浜線の電車に乗り込んだ。

電車は、松山市駅を出発して高浜方面へ向かった。

座席に座っているアタシは、ひざの上に載っているキャリーバッグを抱えながら震える声で泣いた。

電車が終点の高浜駅に着いた。

電車を降りたアタシは、キャリーバッグを持って松山観光港へ向かう連絡バスに乗り込んだ。

菜種梅雨(はるのあめ)がバスの窓をたたきつけていた。

それから5分後に、バスが松山観光港に着いた。

バスを降りたアタシは、キャリーバッグを持って足早に広島行きの瀬戸内海汽船のフェリーに乗り込んだ。

出航5分前のドラの音が鳴り響いた。

アタシは、右腕につけているジーショック(腕時計)を見つめた。

出航時刻になった時、高らかに汽笛をあげながらフェリーが岸壁から離れた。

アタシは、キャリーバッグの中からウォークマンを取り出して歌を聴いている。

村下孝蔵さんの歌で『松山行きフェリー』の歌がイヤホンから流れていた。

アタシは、明日からカレのもとでドーセーセーカツを始める…

進路面談の時にあななタンカ切った以上、あとにひくことはできん…

アタシは…

これでいいのだろうか…
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