この恋が手遅れになる前に

先輩は涼平くんと加藤さんの同期である同室の女の子にも怒りをぶつける。そんなことを彼女に言っても困るだろうに、先輩は相当加藤さんに怒っている。

「気分転換に温泉入りましょう。ね?」

私はヒートアップする先輩と落ち込む後輩を大浴場へ促す。

ロッカーのカゴに服を入れながら小さく溜め息をつく。
会社の人間関係が荒れてきている。特に加藤さんは何かと話題に上ることが多くなってきた。
このままでは彼女が社内で浮いてしまう。
何とかしないとな……政樹に相談してみようかな……。










大宴会場に社員が集まると圧巻の光景だった。
社長の乾杯のあいさつで始まった宴会は次第に賑やかになる。

先ほどまで怒っていた先輩は温泉に浸かって怒りが治まったものの、女性社員が多いテーブルに座ったせいで怒りが再び湧き上がったようだ。そのテーブルから離れて政樹を探しているうちに涼平くんがまたも加藤さんに捕まっているのを見つけた。
涼平くんがお酌するために各テーブルを回るのにくっついて加藤さんも移動している。
それを見て女性社員だけじゃなく男性社員までも揶揄している。

このままじゃ涼平くんの評価も下がりそう……。いくら涼平くんが優秀でも加藤さんに足を引っ張られるじゃん。

そう思う自分も嫌になる。私はやっぱり加藤さんに嫉妬している。

「盛り上がっているところ恐縮ですが、ここで今後の会社の人事についてお知らせがあります」

人事部長の声がスピーカーから聞こえてきて、私は仕方なく政樹を探すのを中断して近くのテーブルに座った。

「来月より朝加営業部長が奥様の会社に出向されます」

< 83 / 94 >

この作品をシェア

pagetop