呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?


(何が、どうなっているんだ?)
 イザークは興奮を抑えながら目を擦り、再び同じ場所に目を向けてみる。と、そこに眠るのはシンシアではなくユフェだった。

 しかしイザークの胸は早鐘を打つ。
 実のところキーリから不思議な話を聞いていた。
 それはロッテが服用していた薬瓶を回収して調べたところ、中身が魔瘴核ではなく清浄核に変わっていたということだ。


 心臓の鼓動はさらに速さを増していく。
 ユフェはイザークが唯一猫アレルギーが発症しない猫だ。もしも、猫アレルギーが発症しない理由が、呪いで猫にされた人間だったら?

「――まさかな」


 そこまで想像を巡らせて、自嘲気味に笑った。
 きっと自分は疲れている。疲れているから、こんな都合の良い幻覚を見る。

「ユフェは妖精猫だ。呪われた人間じゃない。ここに来て暫く正体を明かさなかったし、今回も魔瘴核を清浄核に変えたことを言えない理由があるのだろう」

 肩を竦めてから幸せそうに眠るユフェの頭を指の腹で撫でる。最後にそっと額に口づけをすると部屋の灯りを暗くした。

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