呪われ聖女、暴君皇帝の愛猫になる 溺愛されるのがお仕事って全力で逃げたいんですが?


「うっ……」

 身体の節々が痛み、骨が軋み始める。あまりの激痛に息ができなくなり、浅い息を繰り返しながら魔物を睨んだ。

「な、にをしたの?」
「ククク、おまえに呪いを掛けてやったぞ。それはこの世で最も悍ましい生き物に姿が変わる呪いだ」

 呪いは魔物が得意とする魔法の一つだ。ネズミの魔物は報復できて嬉しそうに鳴いた。


「――せいぜい苦しんで死ね」

 不気味な言葉を吐き捨てると消えかかっている尻尾で地面を勢いよく叩き割った。
 尻尾に残りの魔力を注力させたらしく、つむじ風が起きて割れた瓦礫を巻き上げながらシンシアに向かってくる。

 動けないシンシアはもろにそれを受け、風圧に耐えられず空高く吹き飛ばされた。
 みるみるうちに救護所が小さくなっていき、視界から消えてしまう。地面に叩き付けられる前に結界をクッション代わりにすれば助かるが、シンシアにはもう魔力が残っていない。


(私、呪いの前にこのまま地面に叩きつけられて死んじゃうのかな……なんとかしないと。でも、もう駄目……)

 心の中でぽつりと呟くと、苦しみから逃れるようにシンシアは意識を失った。

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