恋愛境界線

「出来ればこの透明フィルムをパクトと一体化させて、こうカバーっぽく捲って使えれば便利かな、って」


「あー、それなら失くす心配もないし、使う時に楽かもしれないわね」


「ですよね!?」と、男である若宮課長には判らないであろう話題で盛り上がりながら、二人でランチに向かう。


今日はこれから、職場の近くにあるという支倉さんおススメのパスタ屋さんに連れて行ってもらう予定だ。


だけど、さすがに万が一のことを考えて、このまま外にまでこのデザイン画を持って行くわけには行かず、外に行く前に一旦、自分のデスクにこれを置きに戻ることにした。


自分の部署が近付くにつれ、女性社員が浮足立っている姿がチラホラ目につく。


「あれ、秘書課の緒方さんよね?このフロアに来るなんて珍しい。どうしたのかしら?」


「オガタさん?あぁ、社長の右腕って言われてる、あの!」


「その割に若く見えるけど、一体何歳なんですか?確か、緒方さんって室長ですよね?」


そんな会話が耳に入ってきて、急いでいた歩みが思わず鈍る。


その瞬間、企画部の入り口のドアに手を掛けていた噂の人物が、察した様にこっちを振り向いた。


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