恋愛境界線

そして、『……芹沢君って鋭い様でいて、鈍いんだね』という言葉の裏側に、この事実が隠されていたことも。


「あのワンピース、サイズが13号と大きめだったから、一瞬『あれ?』って思ったんですよ」


だけど、若宮課長の元カノの体型がそれくらいなんだろうと、すぐに流してしまった。


男の人にとっては、13号であっても小さく感じるかもしれないけれど、肩口を出すデザインに加え、元々上背がそれほど高くなく、がっしりした体躯の持ち主というわけでもない若宮課長ならば、難なく着られるはず。


どうしてあの時に、少しでもその可能性に考えが及ばなかったんだろう、と今なら思う。


けれど、部屋に置かれた明らかに女性向けのドレッサー。


そこから自然とイメージとして湧いてしまった“元カノ”という存在のせいで、そんなことを疑う余地はなかったし、まさか自分の上司が、しかも、よりにもよってあの若宮課長が、女装するとは夢にも思わなかった。


「とにかく、女装についてはそういうことだ。ゲイとは何の関係もない」


「ちょっ、ちょっと待って下さい!そんなわけがありません!!」


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