恋愛境界線

「別に食べたくないなら、私が一人で食べるからいーよ」


渚の皿に取り分けてあげたばかりのたこ焼きを、自分の皿へと移動させようとすると、その手を掴まれた。


「食わない――とは、言ってない」


そう言って、渚は投げやりにそのまま自分の口へと放り込んだ。


「それ、明太子入りで美味しいでしょ?これも食べてみて。こっちはチーズ入りだよ」


「……話を戻すけど、なんであの人の所に居たいわけ?」


「居たいとかじゃなくて、他に行く所がないから、次に住む所が見つかるまで居させてもらうってだけ」


「だから、それならうちにくればいーだろ。ここだって2LDKで、遥の寝るスペースは確保出来るんだから」


「しつこいなー。渚はすぐにうちの両親と結託して、余計なことまで逐一報告するじゃない」


一人暮らしを始めたばかりの頃、外食を続けていたら、そのことを渚はうちの親に何気なく話してしまい、心配性の母親からは、ちゃんとした食生活を送りなさいだの、うちに帰って来たら?だのと、電話がかかってきたくらいだ。


過保護な親の干渉から抜け出したくて一人暮らしを始めたというのに、そんなんじゃ意味がない。


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